2012年度公益社団法人 姫路青年会議所
理事長 三渡眞介(みわたりしんすけ)
姫路らしさ溢れるまちを目指して
【はじめに】
人口減少や高齢化社会、国の財政、食糧自給率やエネルギー危機など、多くの難題を抱える中、東日本大震災が発生しました。多くのいたたまれない悲劇を生んだこの震災は、この国の在り方自体に問題提議をしています。政治、経済、産業、エネルギーなど、中央集権化されたが故の脆さで、被災地のダメージは、日本国中に広がり、今、この国は大きな試練に直面しております。
ヨーロッパを旅した友人に、「向こうの街並みは、それぞれの町が美しく、歴史と個性を感じる。観光地でもない普通の田舎町にも、その町らしさっていうのを感じる。日本に戻ったとき、なんだか寂しくなった。」と、言われたことがあります。
戦後、我々は欧米に追いつき追い越せと、欧米の文明を取り入れ、近代化をする過程において、日本固有の文化までをも、欧米式に変えてしまった部分がありました。その結果、日本の、また各地域の“らしさ”、つまり固有の文化をゆっくり育むことよりも、強力な中央集権のもと、日本全国一様に欧米化してしまった感を否めません。
これから日本を再建するには、各地域がそれぞれの特徴を活かして発展すること、つまり、地域主権が必要です。そうすることで、有事の際にも多角的に対応できる粘り強い国になるのです。
地域の中小企業がその地域の“らしさ”を活かした経営を行い、その地域らしい経済発展を作りだす。文化やまちの形も同様です。この国の本当の強さがここにあるとすれば、地域を支える青年経済人の“最後の学び舎”である我々青年会議所に課せられた役割の重要性は絶大です。
【LOM運営基本方針】
1957年に誕生した公益社団法人 姫路青年会議所は、その脈々と続く活動の中、まちを活性化するとともに、人と人との繋がりを数多く作りそのネットワークを広めてきました。2005年の第54回全国会員大会姫路大会を経て、行政や多くの市民団体からの信頼を得、まちづくりの連携が大きく進み、2006年に策定された「まちづくりグランドデザイン2006」に基づいて、その運動を繰り広げてきました。
2011年度、公益法人制度改革を期に、新たな組織に生まれ変わるべく、思い切った制度改革や取り組みを行い、その中で中長期的な運動指針として“夢ふくらむ姫路創造プロジェクト”が策定されました。この中で、公益社団法人 姫路青年会議所の中長期的かつ具体的な行動プランが掲げられております。
2012年度公益社団法人 姫路青年会議所は、この行動プランを踏まえ、自分たちの魅力を知り、“らしさ”溢れるまちづくりを目指す一年とします。
私は今後の日本の国のあり方は、中央集権から、地域主権になると考えます。各地域が、その地域“らしさ”を活かし、個性溢れる独自の発展を遂げる。そして、そんな力強い地域の集合体が、日本の国としてまとまる。それぞれのまちを愛する人々が、「日本が最高!我がまちが一番!」と言えれば、世界がより良く変わって行くのです。
まずは我々公益社団法人 姫路青年会議所が、「日本が最高!姫路が一番!姫路JCが大好き!」と叫びましょう。そのために、“日本らしさ”、“姫路らしさ”、“姫路JCらしさ”をより深く知り、高めて行きましょう。
【重点事業】
1. “姫路らしさ”溢れる人づくり
2. “姫路JCらしさ”溢れるJAYCEEづくり
3. “姫路らしさ”溢れるまちづくり
4. “姫路JCらしさ”を支える仕組みの強化
1.“姫路らしさ”溢れる人づくり
戦後、国や街の形、また、社会の仕組みが欧米化され、多くの固有文化や“らしさ”が消えてしまっていると感じざるを得ないのですが、今回の震災の被災地において、日本人の道徳心の高さに世界が驚嘆したように、未だ、その根幹は失われていません。
姫路には山・川・海・里の豊かな自然が存在します。古くから人々はその自然と共に暮らし、文化・伝統を築きあげてきました。庶民文化の代表とも言える祭りを始め固有の文化が色濃く残っています。時代に合わせ多くの変化も見られますが、質実剛健な姫路の人々の気質は変わらず、自分たちの生活の中に息づく文化を大切にする。人が人を思いやる繋がりを大切にする。
これら素晴らしい文化・伝統を次世代に引き継いで行かねばなりません。
今年度は、2011年度の“夢ふくらむ姫路創造プロジェクト”に基づき、そんな姫路の歴史や地理、そこに住まう人々の気質を考察し、“姫路らしさ”を研究します。また、日本の近現代史を学ぶことで、本来、日本人が持っていた“らしさ”を知ると共に、日本の何が変わったのかを考え、“日本らしさ”、“姫路らしさ”溢れる人づくりを推進して参ります。
さらに、積極的に他の文化やまち、LOMと交流し、自分たちの“らしさ”に気づきましょう。今後、日本人は、自分たちの“らしさ”を磨き、その活動範囲を広く世界へ求める時代です。
2.“姫路JCらしさ”溢れるJAYCEEづくり
“姫路JCらしさ”とは、やはり人と人とのつながりの濃さであり、それが公益社団法人 姫路青年会議所の運動推進の原動力となってきました。委員会や事業を通して共に汗をかき、夜が更けるまで語り合う。そうして過ごした時間が、人生においてかけがえのない友を生み、その縦横のネットワークは、時にまちを動かす力さえも持ちます。今年度も、まずはただ純粋に公益社団法人 姫路青年会議所に参画し、仲間同士のつながりを精一杯楽しみましょう。また、多くの機会があることも“姫路JCらしさ”の一つです。様々な役職、様々な事業、各種大会への参画の機会があります。そして、過去の出向者のおかげで、出向の機会も数多く用意されております。姫路JC会員らしく、元気よく、明るく、すぐそこにあるチャンスをつかみましょう。会員同士や他LOMとのつながりをより深め、より楽しく、意義深い青年会議所活動にして行きましょう。
また、会員拡大は“姫路JCらしさ”づくりの基礎です。必ず成功させねばなりません。先輩方から託された、この大切な、公益社団法人 姫路青年会議所を、次代につないで参ります。
公益社団法人 姫路青年会議所が、他のまちづくり団体と最も違うところは、地域開発と同時に、会員の資質向上と絆を深め合うことを脈々と行ってきたことです。今年度も、会員同士の絆、人と人とのつながりをより深め、姫路JC らしさ溢れるLOMにして参ります。
3.“姫路らしさ”溢れるまちづくり
姫路の沖にある家島諸島の漁獲高は日本で3番目ですが、その事実はあまり知られておりません。姫路の前どれの魚は非常においしく、高級ブランドとなってもおかしくないほどです。
姫路は、農林水産業はもとより、タタラ製鉄の昔から、鉄鋼業の発達した地域でもあり、今、ここ姫路にあるものをもっとクローズアップしていけば、多くの地域ブランドができる可能性に満ち溢れております。そこで、姫路の恵まれた自然や歴史、また、環境の魅力を活かし、今ここにある“姫路らしさ”を、地域ブランドへとつなげる事業を展開します。
また、長年の姫路JCのまちづくり事業を通して、多くのまちづくり人が育成され、さまざまなまちづくりのネットワークが広がってきました。特に、2011年度に飛躍した、行政との連携を最大限に活かしたまちづくり事業をさらに発展させ、まちづくりのネットワークを強化し、次代へ継承される新たな“姫路らしさ”へと進化させます。
4.“姫路JCらしさ”を支える仕組みの強化
公益社団法人 姫路青年会議所の理事会をはじめとする各会議の厳しさや、秩序正しさは、その事業の質を維持するだけでなく、スタッフ会議など一緒に過ごす時間を増やすため、会員同士のつながりを深めてきました。そうして、多くの青年経済人を育て、地域経済の発展に大きく寄与してきたのです。これは“姫路JCらしさ”を支える大きな要因の一つであったと言えます。
本年度も公益法人制度改革への取り組みを引き続き行います。この中で、新たな仕組み作りをすることも必要となっておりますが、過去より脈々と継承されてきた公益社団法人 姫路青年会議所の運営や活動、また、つながりを醸成する仕組みを損なうことなく次代へ引き継ぐことこそが重要であると捉え、今までの魅力ある“姫路JCらしさ”をそのままに、このたびの法人格の見直しに取り組んで参ります。
また、公益社団法人 姫路青年会議所の運動とその“らしさ”を広く一般に伝えるとともに、会員が「“姫路JCらしさ”って言えば、これだよ。」と、自信を持って言えるように、対内広報にも力を入れ、会員の資質向上に役立つ情報提供を行って参ります。
【最後に】
明治時代初期の思想家であり哲学者でもあった岡倉天心は、ものすごい勢いで西欧諸国の文明を取り入れる日本に危機感を覚え、以下の言葉を遺しました。
『昔から日本には外国からの思想が殺到してきたが、日本人は伝統を尊重し、自らの個性を大切にしてきた。われわれは今後もさらに西欧化していこうとしているが、世界から尊敬を得るには、我々自身の理想に忠実であることを忘れてはならない。』
日本人には、他の国の文化を認めて受け入れる度量、懐の深さがあります。しかし、他の文化の良いところを取り入れる前に、我々自身の理想を忘れてはならないのです。
今年は、“日本らしさ”、“姫路らしさ”、“姫路JCらしさ”を再認識し、それを最大限に活かすための運動をおこしていきます。
そうして、みんなで、元気よく、精一杯JC活動を楽しみ、「日本が最高!姫路が一番!姫路JCが大好き!」と、叫んでまいります。
皆様の積極的なご協力、ご参画をお願い申し上げます。