2024年06月30日(日)第3回 姫路福祉保育専門学校 編
皆さん、こんにちは!公益社団法人姫路青年会議所 ダイバーシティ推進委員会の黒田と申します!
前回は、姫路市石倉にある「株式会社エス・アイ」様に取材をさせていただきました。株式会社エス・アイ様が取り組まれている、働き方や様々な制度を独自に取り入れられている内容に、「すごく参考になりました。」「自分にあった働き方が見つけられそう!」「家庭の事情で就労を悩んでいるけど、こういった取り組みをされている会社があれば就労を検討できる!」などのお声をいただき、取材させていただいたことを非常にうれしく思っております。株式会社エス・アイ様、本当にありがとうございました。
様々なひとに向けて、情報発信ができればと思います。
さて、第 3 回の訪問先は手柄にある「姫路福祉保育専門学校」さんです!
主な概要は次のとおりです。
【学校名】 姫路福祉保育専門学校
【代表者】 理事長 下林五枝
【所在地】 姫路市手柄 1 丁目 22-1
【開校日】 1991 年 4 月
【学校情報】
姫路福祉保育専門学校は、介護福祉科と保育こども学科の 2 学科を設置する専門学校ですが、福祉業界の人財不足を解消すべく、外国人留学生の受け入れを積極的に行ってきました。同校は、国籍や文化、生活習慣が異なる外国人留学生が、日本人の学生とのコミュニケーションを生み出し、学生生活を円滑に送ることができるよう、留学生・日本人学生の双方に対し、互いの文化や習慣などを理解し尊重し合うことのできる教育的指導を行ってきました。
①出身国のガイド資料を作成し、職員及び関連施設に配布・学習会の開催
②留学生に対し学校生活における具体的な約束を伝える
③母国の料理を振る舞う食事会の開催
④地域の行事(祭り、ファッションショーなど)への参加を勧める
毎年、日本人学生と海外からの留学生を受け入れ、介護現場や、保育現場に人材を輩出されています。
姫路福祉保育専門学校さんインタビュー
福本委員⾧:本日はお忙しい中、インタビューにご協力いただきありがとうございます。まずは、留学生の皆さんに、日本での生活や介護の勉強、将来の夢などについてお話をお伺いできればと思います。まずは順にお名前と出身国を教えていただけますでしょうか。
ロビン :はい、私はロビンと申します。バングラデシュから来ました。よろしくお願
いします。
ビンタ :私はビンタと申します。ベトナムから来ました。本日は、よろしくお願いし
ます。
福本委員⾧:ありがとうございます。バングラデシュ、ベトナムから日本へ学びに来られたのですね。次に、皆さんのご年齢を伺ってもよろしいでしょうか。
ロビン: 私は今年 23 歳になりました。
ビンタ: 私は 27 歳です。
福本委員⾧:皆さん、母国を離れて勉強されているなんて素晴らしいですね。日本に来られてどのくらいになりますか?
ロビン: 私は日本に来て約 4 年になります。来日前にバングラデシュの日本語学校で 1
ヶ月ほど勉強し、大使館でも日本語を学びました。
ビンタ: 私が日本に来てからは 2 年ぐらいです。日本語は生活していく中で、少しずつ
上達してきました。
福本委員⾧:日本語の勉強は大変だったのではないですか?
ロビン: はい、特に漢字の読み書きが難しいです。でも介護の仕事をしながら覚えてい
くことができるので、今は問題ありません。また、学校の先生や事務員さんが
親切に教えてくれます。
ビンタ: 私も最初は大変でしたし、今も大変ですが、頑張ってみんなと会話をするよう
にしています。ただ、介護の専門用語は難しい言葉が多く、家に帰っても勉強する毎日です。
福本委員⾧:日本語が難しいながらも、上手にお話されていると思います!すごいです!日本にこられて、日本の印象はいかがですか?
ロビン: 物価が高いのが大変です。でも、学校で介護の勉強をしながら、仕事を両立さ
せ、色々なことを学べるのは自分のためになっていると思います。
ビンタ: 日本の文化や習慣に触れられるのはとても良い経験だと感じています。食事面
では、母国の味が恋しくなることもあります。特に、姫路で母国の食材が中々購入することが難しく、困っています。
福本委員⾧:勉強や仕事を両立されながら、大変なことも多々あるとは思いますが、日本の生活にも慣れてこられたようですね。ビンタさんは卒業後のご予定はどの
様なことをお考えですか?
ビンタ: 私は卒業後、奨学金をいただいている施設で 5 年間働く予定です。一定期間働
くことで奨学金の返済を免除していただけるので、その機会を活かしたいと思っています。介護福祉士の資格も取得する計画です。資格取得には、難しい日本語が多いですが、留学をしている学生同士や、学校の先生に協力していただき、卒業できるように頑張っております。
福本委員⾧:素晴らしい目標を持っていらっしゃいますね。実際に介護施設で働かれた経験から、ご利用者様と関わって何か印象に残っていることや学びになったこ
とはありますか?
ロビン: 私は利用者さんとお話するのがとても好きです。色々なご利用者さんがいて、
お話をしたりすることが楽しみで、仕事も頑張っています。施設の職員さんもすごく親切にしていただき、たくさん日本語でお話をすることがあり、自分のためになっています。
福本委員⾧:施設を利用されている方、コミュニケーションを大切にされているのが伝わってきます。施設の他のスタッフの方々との関係はいかがですか?
ビンタ: 私はまだ働きはじめたばかりで、介護の知識も十分ではありません。それでも
先輩方がとても優しく丁寧に指導してくださるので、少しずつ仕事を覚えられていると感じています。わからないことは何でも聞ける環境があるのはありがたいですね。
福本委員⾧:サポートしてくれる方がいるのは心強いですよね。一方で、介護の勉強をしていく中で大変だと感じることはありますか?
ロビン: 授業で出てくる専門用語の多さに戸惑うことがあります。その言葉の意味を調
べるのに時間がかかりますし、授業中にメモを取るのも大変です。母国語に訳して理解しようとするのですが、なかなか頭に入ってこない時があって…。そういう時は先生方に質問したり、クラスメイトと教え合ったりしながら、乗り越えるようにしています。
ビンタ: 私は実技試験が難しいと感じています。利用者役を交代でやるのですが、利用
者さんの気持ちを想像しながら介助するのは、まだまだ練習が必要だと実感しています。利用者さんに不快な思いをさせないよう、もっと練習を積まなければと思います。
福本委員⾧:大変な面もあるかと思いますが、お二人とも前向きに取り組まれている様子が伝わってきました。今後の目標についても教えていただけますか。
ロビン: 私はまずは介護福祉士の国家資格に合格することが目標です。そして奨学金を
いただいている施設で 5 年間働いた後は、母を日本に呼び寄せたいと考えています。母に日本の暮らしを体験してもらい、私の働く姿を見てもらえたら嬉しいですね。いつか一緒に暮らせる日が来ることを夢見ています。
ビンタ: 私も資格取得後はしっかりと現場で経験を積み、いずれはヨーロッパで働きた
いと思っています。実は弟がイタリアで仕事をしているので、イタリアかフランスあたりで介護の仕事ができたら素敵だなと。もちろん日本語も忘れないよう、これからも勉強は続けていくつもりです。
福本委員⾧:素晴らしい夢をお持ちですね。応援しております!最後に、これから介護を学ぼうと考えている留学生の方々に向けてメッセージをいただけますでしょうか。
ロビン: 勉強も仕事も、時には思うようにいかないことがあると思います。でも仲間と
助け合い、夢に向かって一緒に頑張りましょう。わからないことは一人で抱え込まず、友達や先生に聞くことが大切だと思います。みんなで知恵を出し合って、乗り越えていきましょう。
ビンタ: 介護は体力的にも精神的にも大変な仕事だと思いますが、それ以上にやりがい
のある素晴らしい仕事だと私は感じています。利用者さんの笑顔のために、私たちが異国の地で頑張れることは本当に意味のあることだと信じています。言葉や文化の違いに戸惑うこともあるかもしれませんが、どうか諦めずに一緒に学んでいきましょう。応援しています!
福本委員⾧:ロビンさん、ビンタさん、今日は貴重なお話をありがとうございました。お二人の真摯に学ぼうとする姿勢と、利用者さんへの温かいお気持ちに感銘を
受けました。夢の実現に向けて、これからも頑張ってください。私たち JCI姫路も微力ながら応援させていただきます。本日はお時間をいただき本当にありがとうございました。今後のご活躍を心よりお祈りしております。
福本委員⾧:前田先生、先ほど留学生の皆さんからお話を伺ったのですが、留学生の方々は皆さん本当に真面目で、介護の勉強に熱心に取り組まれているという印象を受けました。その一方で、やはり言葉の壁や文化の違いから、時に戸惑いを感じることもあるようです。留学生を受け入れる側として、何か苦労されている点などはありますでしょうか。
前田先生:そうですね、受け入れ側として苦労することは、生徒も言っていましが、日本語をどのように伝えるか、また、日本の習慣に慣れていただくことが大変です。生徒は、介護福祉士の資格を取得に向けて勉強に取り組みますが、試験問題の日本語を伝えていくことも課題ではあります。
福本委員⾧:なるほど、日本語や習慣を伝えていくことが大変なのですね。資格試験の対策を伝えていくことも大変そうですね。そのあたりで、指導上での難しさを感じられることなどはありますか?
前田先生:指導上の難しさですか。そうですね、授業の内容を伝えるというのもそうですが、専門用語をどのように伝えていくか、生徒がわかるように伝えていくことですね。
福本委員⾧:なるほど。介護に限らずだと思いますが、日本語の専門用語は難しいと思います。仕事として介護現場にも行かれていると思いますが、職場で困らないような指導などはされていますか。
前田先生:現場にでると、利用者様、施設スタッフとのコミュニケーションに苦労していると思います。そこで、生徒が困らないように介護の専門用語をわかりやすくしたパンフレットを作成しました。なぜなら、利用者様が「ここが痛い」と言われたことを施設スタッフに的確に伝えなければ、適切なケアができず事故に繋がるからです。そういった点も含め、生徒が現場で困らないように伝えています。
福本委員⾧:なるほど、利用者さんへのケアに直結してくることでもあるので、専門用語をわかりやすく資料を通じて伝えられているのですね。学校側の現場で必要なことを伝えていく大変さはあると思いますが、生徒さんの方は、現場に出られて大変だと感じられていることの相談などはありますか。
前田先生:そうですね。様々困りごとは聞きますが、一番は文化の違いの戸惑いと、コミュニケーションに関して生徒から聞きます。例えば、背景が違えば、物事の捉え方も異なってきます。相手に何かを頼むときの言い方ひとつとっても、国によって表現の仕方が違いますし、「~してください」と言われても、どの程度の強さで言っているのかがわからず、こちらの意図が正確に伝わらないことがあるからです。
福本委員⾧:なるほど。日本語でのコミュニケーションも当然だと思いますが、文化の違いの戸惑いもそうですよね。
前田先生:ただ、お互いの文化を理解し合おうとする姿勢があれば、そうした違いも乗り越えているようです。時間はかかることですが。(笑)
福本委員⾧:「お互いを理解し合おうとする」っていう考えは、素晴らしいですね!相互理解をしていくことは大事ですよね。お互いを理解し合うのは、生徒はその気持ち、思いが強いと思いますが、職場側のスタッフさんの意識はいかがですか?
前田先生:学校側として受け入れをしていただく施設側へ、生徒の出身国の文化や習慣を知っていただくために、私たちの方から生徒情報を集め、就業前に施設側に伝えます。そして、施設スタッフ様から生徒に色々質問していただき、生徒を理解していただくように伝えています。
福本委員⾧:なるほど。事前に施設側にも協力していただき、生徒が働きやすい環境づくりをされているのですね。
前田先生:はい。そういうやりとりをしていただくことで、施設スタッフと生徒との距離はぐっと縮まります。介護の仕事では、利用者さん一人ひとりの生活習慣や価値観に寄り添うことが大切です。お互いの文化的背景への理解を深めることは、多様性を尊重する介護が重要だと考えています。
福本委員⾧:互いの背景を知ろうとする姿勢が、理解を深めるために大切なのですね。利用者さんに寄り添うことの大切さは、介護の現場ならではの学びだと思いま
した。ところで先生は、これまで教員や校⾧先生など、様々なお立場で教育に携わってこられたとお聞きしています。これまでの経験の中で、学生の指導で心がけてこられたことなどはありますでしょうか。
前田先生:今まで、教員や校⾧、教育委員会と経験をさせていただきました。また、教員時代には生徒指導も経験しましたが、指導に大切なことは、生徒一人ひとりと向き合い、その学生が何を大切にしているのかを知ろうとすることですね。
福本委員⾧:一人ひとりに向き合っていくことは、ひととひとの関係を築いていく上で大切なことですね。
前田先生:はい。それが私の教育者としての信条だと思っています。例えば、悪いことをした学生でも、その行動の裏側にある思いを読み取ることから指導は始まると
思っています。
福本委員⾧:なるほど。悪いことに限らず、行動の裏側には何かあることを、汲み取っていくことは大事なことなのですね。
前田先生:例えば、万引きをした生徒がいるとします。「なぜそんなことをしたのか」と問いかけ、話を聞いていくと、必ず何か思っていることが見えてきます。その気持ちに寄り添いながら、より良い方向へ導いていく。それが、生徒指導の基本はそこにあると思っています。
福本委員⾧:悪いことを叱ることも大切だと思いますが、やった本人の話を聞くことから、本心がわかるということですね。こういったことは介護にも通じていますか?
前田先生:はい、もちろん介護の仕事でも同じです。たとえば、認知症で「ありがとう」の言葉が言えなくなっても、その方がこれまで歩んできた人生には、かけがえのない価値があります。その一番大事にしているものが何なのかを汲み取り、それを尊重する姿勢を持つことが大切です。介護職を目指す生徒たちには、そのことの大切さを伝え続けています。
福本委員⾧:なるほど。相手が一番大切にしているものに心を寄せることこそ、それは多様な人々がともに暮らす地域社会を作る上でも、欠かせない視点ですね。最後に、地域リーダーとして活動する私たちへのメッセージをいただけますでしょうか。
前田先生: 相手の人格を認め、多様な価値観を尊重し合える社会。それは地域共生社会の理想であり、私たち一人ひとりが目指すべき社会の姿だと思います。介護の現場では今、外国人材の受け入れが加速しています。「言葉が通じない」「文化が違う」という戸惑いを感じることもあるかもしれません。でも、「どうしてそう考えるのか」「何を大切にしているのか」を知ろうとすることで、理解は深まっていく。介護の仕事を通して、多様性を認め合う土壌を作っていきたい。それが私の願いです。地域の担い手としての皆さまには、ぜひ福祉の現場にも目を向けていただきたい。高齢者も障がい者も児童も、すべてのひとが自分らしく、生き生きと暮らせるまちづくりのために、共に手を携えていければと思います。微力ながら私も、介護福祉士の育成を通して、皆さまに協力させていただきたいと思います。
福本委員⾧:前田先生、貴重なお話をいただき本当にありがとうございました。ひととひとの繋がりを大切にし、お互いを認め合える地域社会を目指すことの大切さを教えていただきました。行政や他団体、地域の方々とも連携しながら、誰もが暮らしやすいまちづくりに取り組んでまいります。今後とも、姫路福祉保育専門学校の先生、生徒の皆さまに私たちが協力できることがあれば、お力になれたらと思います。
前田先生: ありがとうございます。私たちが目指す共生社会の実現のためには、福祉の現場と地域を結ぶ「架け橋」となる皆さまの存在が欠かせません。介護の仕事の魅力を、ぜひ地域の方々に知っていただきたいと思っています。そして、高齢者や障がい者が暮らしやすいまちづくりに向けて、共に知恵を出し合える関係を築いていければと思います。介護の現場で培ったことを地域に還元し、地域の力を福祉の現場に活かす。そんな好循環を生み出せる「地域共生社会」を、皆さまと一緒に作っていければと願っています。JCI 姫路の皆さまとは、今後も様々な形で連携を深めさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
福本委員⾧:こちらこそ、示唆に富んだお話をいただき感謝しております。本日学ばせていただいたことを、様々な方に発信し、より良いまちづくりの活動に繋げてまいります。本日はありがとうございました。
~本記事のまとめ~
今回、取材に応じてくれたロビンさんとビンタさん、お二人とも母国を離れ、言葉も文化も異なる日本で懸命に勉強に励む姿が印象的でした。介護の世界に飛び込んだ彼らの眼差しは、異国の地で暮らす不安を物語っていましたが、それ以上に利用者さんと心を通わせたいという情熱に溢れていました。「介護は国境を越えて」。二人の姿からそんな言葉が浮かんできました。
お二人を指導する前田先生の教育への熱い思いも、心に響くものがありました。「多様な価値観を認め合うこと」「一人ひとりに寄り添うこと」。先生の言葉一つひとつに、福祉の原点とも言うべき優しさと強さを感じずにはいられませんでした。外国人材の受け入れが加速する介護現場を「多文化がともに生きる場」へ。そして、地域社会も「誰もが暮らしやすいまち」へ。大きな理想を掲げる先生の姿は、介護の未来を担うにふさわしい頼もしさに満ちていました。
インタビューを終えて、改めて「幸せな社会」について考えさせられました。「お互いを認め合い、支え合える社会」。それはきっと私たち一人ひとりの手で作っていけるはずです。介護の現場から、地域社会から、そして姫路青年会議所の活動から、「多文化がともに生きること」と「地域がともに生きること」を胸に、明日への一歩を踏み出したいと思います。
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