2024年08月02日(金)第4回 ウシオ電機 編 創業の精神から紡ぐ、全員輝く職場づくり 〜姫路発、ウシオ電機のダイバーシティ革命〜
皆さま、こんにちは!公益社団法人姫路青年会議所 ダイバーシティ推進委員会の黒田と申します!
2024年度、私たちはダイバーシティ推進委員会として、幅広い情報を調査し、皆さまにダイバーシティに関する情報を発信してまいります。私たちと共にダイバーシティについて学び、地域社会や私たちの住む場所で多様な考え方を取り入れていくことを目指していきましょう!
4月から10月までの期間に、姫路市で活躍されている企業や団体を取材し、毎月記事を更新していきます。皆さまのご支援とご協力をいただきながら、地域社会におけるダイバーシティの重要性を広く啓発していきたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします!
さて、第4回の訪問先は別所町にある「ウシオ電機株式会社」さんです!
主な概要は次のとおりです。
会社概要
【会社名】ウシオ電機株式会社
【代表者】代表取締役社長 朝日崇文
【所在地】姫路市別所町佐土1194(播磨事業所)
【設 立】1964年(昭和39年)3月
【会社情報】
ウシオ電機株式会社は、「光のイノベーション」を通じて、豊かな社会・生活の発展に貢献されています。また、「一人ひとりに焦点を当てた経営」の推進を目指し、2017年7月「ダイバーシティ推進プロジェクト」を立ち上げられ、そして、2022年に互いに「尊重しあえる」風土の中で、多様な価値観・背景をもつ人財の協働により、新たな価値が生み出される、という考えをより明確に表すため、「ダイバーシティ&インクルージョンプロジェクト」を発足されました。そして、同プロジェクト内の障がい者雇用分科会では、これまで、手話サークルを通じた手話の啓発活動、「音声認識ソフト」「電子メモパッド」等のITツールの導入により、聴覚障がいのある社員とのコミュニケーションを推進したほか、事業所のバリアフリー化の提案などをされています。このように、同社は、トップダウン方式ではなく、社員の多様な意見を取り上げていくことで、社員が働きやすい職場を実現されています。
企業理念をや「私たちの行動指針10」を掲げ、業務を通じて、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組み、社員一人ひとりが誰もが活躍されています。
(写真手前左から)阪さん、福本委員長、黒田副委員長、阿曽さん、西原幹事、大谷さん、小池さん
ウシオ電機さんインタビュー
(JCI姫路) 本日はよろしくおねがいします。
(ウシオ電機) よろしくお願いします。まずは、ウシオ電機についてご紹介します。当社は1964年に姫路で設立された光技術を専門とする企業です。半導体製造や映画館用プロジェクターなど、様々な分野で高シェア製品をもっています。創業者の牛尾治郎が「光をあかりとしてだけでなくエネルギーとして利用し、新しい光市場を創造する」ということを事業方針として掲げて作った会社で、現在は半導体やフラットパネルディスプレイ、電子部品製造などのインダストリアルプロセス分野、デジタルプロジェクターや照明などのビジュアルイメージング分野、医療や環境などのライフサイエンス分野にて事業展開しており、日本だけでなくアジアやヨーロッパ、アメリカにも生産・販売拠点があります。規模としては、グループ全体で従業員約5,400名、連結売上が1,794億円です(2024年3月末時点)
(JCI姫路) それでは、姫路発祥のウシオ電機様がここまで成長された理由は何でしょうか?
(ウシオ電機) ウシオ電機は創業当初から規模を追求せず、光の専門メーカーとして国際市場のニッチなマーケットでトップシェアをとる「ニッチトップ戦略」や「世界の中堅企業」を目指すという方針で事業を展開しています。実際に、創業翌年の1965年に制定した「四つの基本方針」の1つにも「常に新しい国際社会において、品質、価格、サービスともに十分競争力を有する商品を創り出すこと」とあります。また、この四つの基本方針は脈々と受け継がれ、今の企業理念の礎となっています。
(JCI姫路) 次に、御社の企業理念についてもお聞かせください。
(ウシオ電機) 先ほど申し上げた通り、創業翌年に策定された四つの基本方針をベースに、時代の変遷に伴い少し変化させていますが、今も変わっておらず、また特徴的なのが第一項の「会社の繁栄と社員一人ひとりの人生の充実を一致させること」です。当時、他社では見られない非常に独自性が色濃く出ている理念とされていましたし、現在のESG経営や人を大切にする経営、D&Iにも通じる理念だと思っています。
(JCI姫路) なるほど。先々まで見据えられて考えられ、今でも企業理念が浸透されているのですね。
(ウシオ電機) はい。これが最初の企業理念として掲げられ、創業者の理念に基づいて進んでいるのがいいのではないかと思います。
(JCI姫路) ありがとうございます。次に、御社のダイバーシティ&インクルージョン(以下、D&I。)への取り組みについて教えていただけますか?
(ウシオ電機) D&Iについては、今年の4月から経営の視点でKPIを達成することを目的に、人事部にD&I推進課が設立され計4名の体制でスタートしました。この課とは別に社内から公募したD&Iプロジェクトによる活動もあり、今期で第6期を迎えます。
(JCI姫路) なるほど。D&Iはどういった内容なのですか。
(ウシオ電機) はい。D&Iは、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂)のことです。性別、年齢、障がい、国籍などの見た目の属性や、ライフスタイル、経験、価値観などの内面の属性にかかわらず、それぞれの個を認め合い、尊重し、良いところを活かすことです。先ほどの企業理念「会社の繁栄と社員一人ひとりの人生の充実を一致させる」ということにも繋がります。我々は企業なので、利益を生み出さなければなりません。D&Iに何の利益を求めるかというと「創造性・イノベーション」です。同質の人が集まってできる成果物と、多様な人が集まってできる成果物は、価値が異なると思います。D&Iにより、創造性やイノベーションによる付加価値があると考えており、当社はD&Iを経営戦略の一つとして位置づけています。
(JCI姫路) なるほど、ボランティアなどではなく、経営戦略として考えられているのですね。
(ウシオ電機) はい。ここが重要だと考えています。D&I推進は当社で2030年までの重要課題として5つ掲げているもののうちの1つ「成果を上げやすい職場環境作り」の達成のための一施策と位置づけています。2030年には多様性を認め、尊重し合う会社の風土として構築していくことを目指しています。
(JCI姫路) そうなのですね。プロジェクトチームはどのように活動されているのですか。
(ウシオ電機) D&Iプロジェクトは、D&I推進において、社員・経営・人事部門をつなぎ合わせる役割で、①社員の声・経営方針を反映した施策の検討・実施、②社員の声を反映した人事制度・施策への提言、③D&Iを知り・推進する仲間を増やす、という活動を行なっており、女性活躍推進、障がい者雇用、キャリア支援の三つの分科会で活動しています。
(JCI姫路) なるほど。なぜ、この三つの分科会を設置されたのでしょうか。
(ウシオ電機) ウシオ電機の現状を客観的数字によって優先順位つけ、この3つの分科会を設置しました。また、定量的な達成が目的ではなく、各分科会で設けているミッションの実現に向けて、一歩ずつ進めてきています。ウシオ電機の男性・女性社員の比率は7対3ですが、ここ播磨事業所においては、6対4となっており、女性の活躍がより一層必要です。また、障がい者雇用については、労働人口確保の観点を含め、社会的課題だと捉えています。キャリア支援については、人生100年時代において、労働者の働く期間が長くなっています。今は60歳が定年ですが、今後65歳、いずれは70歳となる可能性があるため、ベテラン層の活躍支援や、その間に体調を崩したり、介護がある場合を想定し、ライフ支援ということで、色々な社会課題に対しての活動、対応をしています。
(JCI姫路) ミッションが設けられているのですね。その三つの分科会とそれぞれのミッションについてお聞かせください。
(ウシオ電機) まず、女性活躍推進分科会においては、仕事に対するモチベーション向上やチャレンジしやすい環境作り、また性別に関係なくかつライフステージに応じて能力を最大限に発揮できる職場作りを目指しています。このライフステージに応じてというところですが、女性の場合は結婚・出産・育児があり、後々は介護の必要性も生じます。介護は女性だけに限ることではありませんが、「女性らしさ」というイメージから、女性がすることと言う無意識な偏見(アンコンシャスバイアス)が生まれているのが現状です。このようなところでも、女性の負担が増えることを軽減するために、女性活躍推進に取り組んでいます。
(JCI姫路) なるほど、女性らしさというのも女性の負担になってしまいますよね。それでは、二つ目の分科会についてお聞かせください。
(ウシオ電機) 障がい者雇用分科会では、誰もが安心・安全に働ける職場環境作り、互いが理解し、尊重しあえる風土の醸成を目指しています。これは社会課題の解決にも繋がり、多様な価値を生み出すと考えています。
(JCI姫路) 確かに、障がい者の雇用によって、誰もが安心安全に働ける職場環境作りに繋がりますね。最後に、三つ目の分科会についてお聞かせください。
(ウシオ電機) キャリア支援分科会の「キャリア」については、最近よく耳にする言葉で、特に今の学生は自分のキャリア観で会社を選び、仕事を選ぶ傾向にあります。キャリアの主体は本人で、会社は社員を支援することだと思います。
(JCI姫路) ありがとうございます。それでは、D&Iの取り組みを行った歩みについてお聞かせください。
(ウシオ電機) 2017年の7月からプロジェクトを開始しており、現在第6期目を迎えております。第1期では手上げ制で集まり、11名の社員から始まりました。
(JCI姫路) 取り組みを開始され、もう6期を迎えられているのですね。
(ウシオ電機) 現在現在6期目で人数が50名と大幅増になっているということで、社員の関心の高さがうかがえます。開始時はダイバーシティだけで、インクルージョンはありませんでした。多様な人材の価値観を尊重する風土・しくみの構築、また「全社一律」ではなく「個と組織の力を活かすカスタマイゼーション」を方針としていました。
(JCI姫路) 年々参加される人数も増え、徐々に社内でもプロジェクトが浸透してきているということなのですね。
(ウシオ電機) はい。また、最近ではD&IにE(Equity)を付加した、DE&Iという考え方があります。Equityとは「公平」であって「平等」ではないという意味です。例えば、木に成っている果物を取ろうとしている子供と大人の男性・女性がいて、全員同じ高さの台に立っていると、子供は果物が取れないですよね。そうではなく、身長に合わせて高さを調整したり踏み台をつけたりして、みんなが取れるようにしようというのが「Equity」です。そういうことで全社一律ではなく、もっと組織の力を生かすカスタマイズをしていきましょうということです。これはスタートラインを合わせましょうということだと思っています。このような体制をとっていくということで、事業の競争力向上、社員のモチベーション向上、会社の繁栄と社員の幸せに繋がります。
(JCI姫路) D&Iだけでなく、DE&Iとさらに多様性や包摂だけでなく、公平や平等にも着目され、組織全体の力を生かすことまでも考えられているんですね。
(ウシオ電機) はい。例えば、プロジェクト発足当時から在宅勤務を視野に入れていた働き方改革に取り組んできていたため、コロナ禍で在宅勤務が必要になっても、比較的スムーズに移行できたのではないかと思います。
(JCI姫路) なるほど。そういった中で、プロジェクトチームなどを設置するといったD&Iの取り組みに対する社内の評判はいかがですか?
(ウシオ電機) 社内のアンケート結果によると「D&Iについて知っているか」について、「知っている」が40%、「聞いたことある」が36%で全体の76%でした。これが多いと見るか少ないと見るかは難しいところですが、「D&Iプロジェクト活動に期待していますか」という質問に対しては、「期待している」が21%、「どちらかといえば期待している」が47%で、合わせて68%です。これは比較的高いのではないかと思います。
(JCI姫路) 実際に障がいをお持ちの方が勤められている部分で、会社側として困られたことや部門、部署で従業員同士の課題などについて、意見が上がってきたりしますか?
(ウシオ電機) 私たちは障がい者の方よりの活動をするのですが、受け入れ部署から色々な意見を聞くことが多くあり、フォローが足りていないと感じています。風土醸成を進めていくにあたっては、障がい者の方だけでなく受け入れ側の受け入れ態勢を整えるためのフォローを設けることが必要だと思います。
(JCI姫路) なるほど、意見を聞く機会を設けるというのは大切ですね。
(ウシオ電機) 障がい者の方が長く勤めている部署はすでに受け入れ体制が整っており、私たちよりも障がいに対して理解があり難しい作業なども何とかして伝えようといろいろな工夫をしてくださっています。そういった部署を見ていると頭が下がる思いです。慣れというわけではありませんが、この障がいがこういうものだとわかれば、対応の仕方もだんだんわかってきて、それが当たり前に広がっていくのではないかと思います。
(JCI姫路) なるほど。障がい者の雇用はそのようにして実現されているのですね。次に、女性の管理職登用についてはいかがでしょうか?
(ウシオ電機) 女性管理職比率は、グループ全体では15%を超えていますが、国内ではまだ10%を超えていません。日本の人口は約1億2000万人で、男女比はほぼ半々です。社員の男女比も7対3くらいですが、採用時に差をつけているわけではありません。差が出る理由としては、介護などが女性に集中する傾向があるため、そこをサポートする必要があると考えています。
(JCI姫路) 女性管理職の登用にあたり、サポート体制をとられているのですね。それでは、続いて性的マイノリティに関する取り組みはありますか?
(ウシオ電機) 労働組合が主催で講演会開催を予定しています。労働組合の活動には原則会社は入らないのですが、今回は会社からも参加します。講演では、性的マイノリティについて、すべてのひとが何らかのマイノリティ性をもっているという話があります。例えば、男性として生まれたけれど、今は女性として生きている方に来ていただいて、性的マイノリティについて広く理解してもらうような話を予定しています。
(JCI姫路) 今後の課題についてはどのようにお考えですか?
(ウシオ電機) 「成果を上げやすい職場環境づくり」に本当に繋がっているのかという点が課題だと思います。やっていることはいろいろありますが、それがどう繋がっているかをまだ明確に示せていません。働きやすい環境の整備を進めていますが、働きやすいだけでは会社としては成り立ちませんので、成果に繋がるということも意識していかなければいけません。各施策が具体的に成果に繋がっているかを評価するにはまだ至っていないところがあります。
(JCI姫路) 最後に、一般社会へのD&I意識の浸透についてはどのようにお考えですか?
(ウシオ電機) D&Iを綺麗ごとや奉仕・ボランティアではなく、投資だと考えることが重要だと思います。そして、成果や結果として発展に繋がっているのかというところが大事です。例えば、当社の場合、障がい者だからこそ活躍できている面もあり、障がい者雇用分科会の活動は会社にとってプラスになるものです。どんどんD&Iを推進した方が社会の発展に繋がるということをKPIなどを使って認識いただく必要があります。そういった成果を増やしていくことが重要だと考えています。
(JCI姫路) 本日は貴重なお話をありがとうございました。御社の取り組みを参考に、私たちも姫路市民へのD&I意識の浸透に努めていきたいと思います。
~ 編集後記 ~
ウシオ電機様への取材を通じ、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の本質的な意義と実践について、深く学ぶ機会を得ました。創業から60年を経た今も、創業者の理念を大切にしながら、時代に合わせて進化を続ける姿勢に深い感銘を受けました。
特に印象的だったのは、D&Iを単なる社会貢献や福祉の観点ではなく、経営戦略として明確に位置づけている点です。多様性が新たな価値を生み出し、企業の競争力向上に繋がるという考え方は、私たち姫路のまちづくりにも活かせる重要なヒントだと感じました。
同時に、D&I推進の課題も率直に語っていただき、その難しさと重要性を再認識しました。社内での浸透度や、具体的な成果の可視化など、今後取り組むべき課題は多くありますが、それらに真摯に向き合う姿勢に共感を覚えました。
この取り組みを姫路市全体に広げていくために、私たちJCI姫路も一層の努力が必要だと感じています。ウシオ電機様の先進的な取り組みを参考に、多様性を尊重し合える姫路を目指して、具体的な活動を展開していきたいと思います。
今回の取材で得た知見を、今後の我々の活動に積極的に取り入れ、姫路の企業や市民の皆さまにD&Iの重要性を伝えていく所存です。最後に、貴重なお時間を割いていただいたウシオ電機の皆さまに心から感謝申し上げます。この対談が、姫路におけるD&I推進の大きな一歩となることを確信しています。
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